NPO法人FUKUSHIMAいのちの水

2016年度活動計画

2016年度活動計画

願い

1. 事業目的

「ひとりの子のいのちを救うために」というキャッチフレーズのもと、
理不尽の中にいるすべての児童の支援を目的とし、特に原発事故による放射能災害の中にいる福島の児童と、戦争状態の中にいる中東シリア難民児童の支援を行ってゆく。

2. 事業地

法人を福島県郡山市安積に置き、福島県逢瀬町多田野のサンタハウスを事業活動拠点として、放射能災害下のある福島県全域への支援と、シリア戦争下にある中東ヨーロッパ地域全域の難民児童救援を行ってゆく。

3.事業概要

私達は福島第一原発による児童の放射線被爆による健康被害の可能性について以下のごとく認識している。
2013年のWHO報告書により、甲状腺がんを含むその他の疾病の多発への懸念が表明されており、又、2016年2月の福島県健康調査における中間取りまとめ文中においても、「放射線の影響とは考えにくいと評価する。」としつつ、「但し、放射線の影響の可能性は小さいとはいえ現段階ではまだ完全には否定できず、」という文脈によって、2016年段階で、国と県医師団とは児童の被爆による疾病への危惧感を持っていると考えている。しかし、現段階で行政が具体的対応をすることは難しい環境であるので、NPO等民間による対応策が必要である。以下、施策を列挙する。

A) 福島県児童の被爆軽減のための施策
① もったいないからありがとうプロジェクト
母親サロン座談会
③ 光合成細菌による自己除染の開発啓蒙
④ チュルノブイリ法に倣う保養キャンプ場の建設

これらの事業推進の中で、ひとりの子のいのちを救う手法は、21世紀の子供のいのちを救う手法にも適用しうると考え、現地からの要請に応えて、
B) 中東シリア難民児童の支援が行うこととした。

更に、これら事業の実現のための募金活動として、
C) FUKUSHIMAいのちの水基金 の中にFUKUSHIMA母ごころ募金…セブンドナーオペレーションという募金者参加型寄付のシステムを構築することとした。

4現状認識

A) 福島県の被災に対する現状認識
東北大震災から5年、福島には、今だに東北全体の44%の避難者が存在する。行政が避難者の帰還を促進し、避難者への支援金交付打ち切りを告知しているので、多くの避難者が2017年3月までに、帰還か移住の決断を迫られている。現在福島県の避難者は、県内仮設・みなし仮設12,759人、県外13,308人の合計26,067人となり、宮城、岩手を上回っている。帰還困難の理由は、年1msvを上回る放射線量である。市街地の除染が進んでいるので、空中線量は基準値(0.23μsv/h)以下になりつつあるが、土壌汚染は放射能管理区域の2~7倍(平成26年計測文部科学省)と高く、その中に、児童、妊婦を住まわせることへの不安が人々を躊躇させている。そのため帰還者は老年層に集中し、若年層では他所への移住が多くなっているのが実情である。こうした状況の中で、震災関連死と認定された人は、福島県2007人、岩手県455人、宮城県918人。福島県での仮設住宅での死亡者の数は、震災の死亡者数を上回っている(毎日新聞 2016年1月4日)。
当NPOは、これら福島の被災者支援のために、「もったいないからありがとうユニオン」というプロジェクトを立て上げ、大量に廃棄され、国の急務ともなっているフードロス食品の活用(無料配給)によって、安全な食品の無料提供を行い、被災家庭の家計を支援し、安心と希望を与える活動を行って行く。特に放射線被曝感受性の高いと言われる児童、妊婦が安心して福島に住むことが出来るように支援し、併せて中東の難民支援を視野に入れつつ、日本のフードロス政策に寄与し、経済と環境との保全に寄与する活動を行う。

B) シリア中東難民への現状認識
2011年3月以降に起きたシリア内戦により、22万人以上が死亡。国連難民高等弁務官事務所によると、人口2200万のうち400万人以上が国外で避難生活を送っている。欧米では数千・数万単位の受け入れが議論されているが、日本では11~14年に難民申請した63人のシリア人のうち、難民と認定されたのは3人のみである。(朝日2015・10)
2015年、福島の支援を求めに渡米した際、シリアの婦人達にシリアの子供達の支援を要請された。2015年2月に、トルコの海岸に打ち上げられたアスラン クルディ君(3才)の写真は、ヨーロッパ社会を動かし、日本政府も支援を表明している。帰国後フェースブックで、シリア難民児童支援を訴えたところ、大きな反響を呼び、数百トンの支援物資が集まった。幸い、私達には福島の子供達のための支援物資管理能力が出来ていたので、対応することが出来た。福島の子供達の為に培った300トンに及ぶ大量物資の管理能力がなければ出来えないことであった。切迫しているシリア児童のためにも、理不尽な災害の中で、見捨てられ不安を抱いている福島の子供達の、自尊意識を育てる意味においても、シリア難民支援を行ってゆくこととした。

事業マップ

5.事業施策案

被爆軽減策

(1)もったいないからありがとうプロジェクト(フードロス食品活用プログラム)
私達の被爆対策は3つあります。一つはこれ以上の内部被爆をさせないこと、二つ目は体内放射線量値を下げること、3つ目はホットスポットの除染。もったいないからありがとうユニオンは、最初の内部被爆回避のプランです。
チェルノブイリでの経験的から設定された空中線量0.23μsv/hは、年間1msv/y、生涯被爆量を70msv/yと考えている。現在、福島の空中線量は、国の除染によって、基準値以下に除染されているので、一部のホットスポット問題を除いて、おおむね安全と考えることが出来る。しかし、土壌汚染を見ると、郡山市で100KBq/㎡、福島市で3000KBq/㎡と、国の放射能管理区域の40KBq/㎡を大幅に上回っている。(文部科学省、放射能拡大サイトH26) これらの現状分析から、私達は長期間にわたって福島で生活せざるを得ない子供達が、これ以上晩成内部被爆をしないように、出来る限り自然放射能値に近い食べ物を子供達が摂取できるように、ということを重点施策とした。
そのために、当NPOは、震災より5年間、ミネラルウォーターの無料配布を行い、累計3000㌧(600万本/500ml・大型トラック300台分)を達成してきた。災害当初から放射能汚染地域では、まず水が渇望されていたからである。2011 年当初、ミネラルウォーター供給源は、国内外からの緊急援助物資であったが、2013年4月には、ほとんどの支援団体からの提供は無くなった。しかし、依然として水渇望する人々のために、私達は新たな供給源の開拓に迫られ、2013年4月以降、フードバンクからのロス食品の中のミネラルウォーターへと供給形態を変化させた。他の災害と違い、長期にわたる放射能災害に対処するためには、緊急支援体制から、長期政策的支援体制に事業転換する必要があった。幸い、2011年から2013年にかけての水、食料の配給を行う中で、フードバンクからの提供ルートが構築されており、そのルートからの水の供給を拡大して行くことができた。年廃棄量500万㌧(総量1900万㌧)と言われる可食フードロス食品への転換は、国策とも相まって、水、食品の提供拡大に大きな力となった。
2015年4月、配給所、倉庫を郡山市逢瀬町多田野に移転。倉庫面積200坪、事務所催事場200坪、敷地860坪を確保、在庫量を拡大し、配給量の増加を図った。
更に2013年後半から、水と共に食品類の提供を行い、現在(2016.5)では、在庫量300トン、月配給量60トン、受け取り児童数2500人、登録会員数7000人となっている。
2016年7月に、プレハブ冷凍倉庫(3坪)を建設、冷凍食品の配給拡大を行う。現在、月300人ほどへ、米、ナン、雑穀パン、チェリー、冷凍野菜、アイスクリーム等の冷凍食品を配給しているが、自家冷凍倉庫の建設によって、1000名/月への冷凍食品配給が可能となる。又、2016年は、缶詰、ドライフリーズ食品等の提供先を開拓、被災者家庭のエンゲル係数の低下支援を行ってゆく。
事業対象は、福島県内の震災原発事故被災者、児童35万人とその家族とし、併せて、身体障碍者、低所得者等の社会的弱者への支援を行っている。
福島におけるこれらのフードロス食品利用の試みは、世界的動向に沿った働きであり、行政にとってのプロトタイプ事業となると考えている。世界一ロス食品の多い日本であるから、行政の必要と相まって、ロス食品の活用という側面からも、当NPOの存立意義があると考えている。
不幸な出来事ではあったが、放射能災害があったからこそ出来る、「自分達で創る経済特区」を目指し、「奪われた以上の夢を、失った以上の希望を」福島に与えてゆく。
さらに、母親達が福島の放射能下にいる「ひとりの子のいのちを救うために」始めた働きが、「もったいないからありがとう運動」という現実的経済的力となって、緊急支援を必要としているシリア中東の子供達の命を救う活動として成長していることを併せてご報告いたします。

(2)母親サロン座談会
今、福島の母親達の本音は、「もう放射能災害を忘れたい」ということである。あまりにも長い不安へのストレスが、子供の健康さえ無視しようとする危険が福島を覆おうとしている。しかし、国が滅びても子孫の健康問題は残るということが、チェルノブイリの教訓である。事実から目をそらせることなく、20年、30年をここに過ごす子供達のために、必ず安全と安心を作り上げねばならない。そのためには母親達を支援し、精神的、経済的に強めなければならない。サロンは母親達への慰安、心の支援だけではなく、家計を助ける行為のよって、積極的に希望を創りだしてゆく支援を行ってゆく。
月ごとのサロンは、母親がホット一息つくことが出来るように支援し、春夏秋冬4回のクリスマスでは、徹底的に子供達が楽しめるような企画を行っている。2016年もスプリング、サマー、オータム、ウィンタークリスマスの4回を行ってゆく、
サロンに参加する母親達には積極的能動的な女性が多く、「もったいないからありがとうユニオン」や、新しい募金システムのセブンドナー(募金者参加型寄付提供者)の初めの実行者となってゆくことを期待している。
さらに、2016年から始まる、光合成細菌によるホットスポットの除染が、研究者との合意を得て生産に入ることが出来れば、サロンにおいてその啓蒙と訓練、普及を行う予定である。
サロンでの安心が母親達を励まし、誰も言わなくなってしまった「福島に住みたい。」という言葉を、子供たちが言い交すことが出来るような、実利的な支援を行ってゆく。

(3)光合成細菌による自己除染の開発啓蒙
2011年当初より、放射能の自己除染方法を模索し、アメリカの原発除染剤等の試用を行ってきたが、除染成績が良くても、除染後に出る汚染物質(8000Bq超)の処理が出来ず、実用に至らなかった。ところが、広島国際学院大学の元学長、佐々木健氏の光合成細菌による、セシューム137の除染法は、除染成績が良いばかりでなく、除染後の汚染物質を百分の一まで減容することが出来ることが分かった。研究者との協議の末、当NPOが福島での除染に使用することが出来るようになった。この製品は、ある一定環境中でのみ生存できる微生物を使用するので、人間に無害であり、むしろ植物の成長を促進させる機能を持つ農事用品である。福島の児童の養育環境の中での除染には、きわめて有効なものである。これを各家庭のホットスポットの除染に使用し、養育環境の安全化が出来れば、福島で子育てしている母親達には、どれほどの福音であろうか。2016年6月から、テスト除染を行ってゆく。

保護者の生活を壊さない保養システムの形成

福島で生きる限り、児童が低レベル放射能による晩成被爆を受けることは避けえない事である。幸いなことに、幼い児童ほど、生体内半減期が短く、乳児においては一週間から十日で、体内の累積放射線量が半減することが分かっている。
そこで、2016年から、福島県内にある猪苗代湖の南岸に、チェルノブイリにならって、広大な保養施設を建設企画してゆく。郡山、福島等中通りの児童を、一定期間、自然放射能地域で保養させるシステムを構築する。膨大な費用を要するので、このことの為にも、広範囲な募金活動が必要である。2016年度から始まる、「FUKUSHIMA母ごころ募金・・・セブンドナーオペレーション」は、これらの費用を得るために計画されたものである。

FUKUSHIMAいのちの水基金

2011年から、FUKUSHIMAいのちの水基金を立て上げてきたが、災害の風化と共に各種団体の助
成も縮小され、NPOを運営することが困難になっている。そこで2016年の重点事業として、
FUKUSHIMAいのちの水基金の中に、新たに「FUKUSHIMA母ごころ募金…セブンドナーオペレーション」という募金システムを導入した。
  当NPOの寄付制度は、賛助会員(個人、団体)と任意寄付であったが、任意寄付を二つに分け、通常の寄付とセブンドナーオペレーションという募金者自由参加型寄付を考案した。
セブンドナーオペレーションは、善意の仲介者が自分の周囲から、700円を集めて送金するセブンドナーというキーパーソンを作るシステムである。今回のシリア物資の集荷で、多くの善意の仲介者が物資を自分のところに集め、送ってくれていることが分かった。何か、世の役に立つことのために働きたいという人々が多くいるのだ。そこで、それらの人々に、寄付金を集めるシステムを提供することで、多くの善意の募金者を募ることができると考えたのである。当方でシステムを立て上げて管理し、母ごころ募金のチラシ等の促進ツールを提供して募金を支援するなら、多くの善意の方々が世のためになる事業に参加できるという喜びを得るであろう。戦争の無い世紀を作るために、皆が働くことが出来るクラウドファンドレージング・セブンドナーオペレーションとして、2016年から始動してゆく。(セブンドナーオペレーションちらしクリック)

シリア中東難民支援のための施策

  シリア難民支援は、G7伊勢志摩サミットでの国際合意にも盛られたごとく、今や、世界的急務となっている。当NPOは2016年4月、シリアに向け、40フィートコンテナ1台(衣類2万着)、20フィートコンテナ1台(2万食)の支援を行った。支援物資の集荷は、今後もWebによる拡散で可能であるが、送料管理費等の用意など、しっかりした事業経営を必要としている。ルートも現在のアメリカNPOのルートだけではなく、新たなルート作りをしてゆく必要がある。そうした計画の中で、助成団体等での送料支援の可能性も出てくる。いずれにしても、10年から20年の長期支援の活動計画を立てて行く。
 物資の集荷は、Webでの拡散を継続し、事業資金調達のための、支援物資の一部換金、サンタハウスに隣接する旧Coop店舗での常設のチャリティーバザール(バザー会場)の設営、募金者参加型寄付・セブンドナーオペレーションを奨励し、更に、定期的にチャリティパーティを開催。寄付者の掘り起こしを行ってゆく。近年、日本の社会の中にも、チャリティ、寄付行為への関心が高まっているので、費用調達の可能性を持っていると考えている。
 また、「福島の子からシリアの子へ」というコンセプトは、理不尽な災害の中で、劣等感を与えられた福島の子供達に、他者への支援をするプライド(自尊意識)を養ってゆくであろう。
市民から市民へという姿勢は、児童のみならず、明日の世界の希望となる要素をもっている。
私達は、21世紀の子供たちに希望を残すためにも、シリア難民支援を、引き続き行ってゆく考えである。

シリア難民支援コンセプトマップ一般20160428
  
    

6.関係団体との連携・調整

震災後最初の配給は、ミネラルウォーターを飯館村2万本。社協を経由して全村に配給した。更に、福島県私立幼園協会を通して幼稚園へ。三春町社協を通して三春町の仮設住宅へ。郡山市の私立保育園協会を通して市内保育園へ。各仮設住宅の管理組合を通して双葉、河内、大熊、葛尾村の仮設住宅への配布等。更に、フードバンク(セカンドハーベスト)等との連携によって、水、フードロス食品の確保を行なっている。又、県内の他のNPOとの連携によって、水、食品の配給ルートを拡充している。

7. 事業管理体制

(1)人員配置
理事長に奥山實(前世界宣教会議議長)、代表理事に坪井永人(世界宣教センター担当牧師)。
2016年より、平栗恵美、紺野ひろみが理事に就任する。
坪井(牧師、カウンセラー)は経営全般、サロンについてはカウンセリングを担当、水、食品配給については仕入れ、機材の確保、リフトでの在庫管理。
平栗は会計、総務、HP管理、サロンコーディネーター。
紺野は総務、在庫管理、施設環境管理等をそれぞれ担当する。
2015年6月から、千葉洋平、葉子夫妻が社員として参加、千葉洋平は、前職がTV局アシスタントディレクターで、映像制作、Webシステム管理、サイト作成等、デジタル担当。
千葉葉子は、前職のパティシエとしての能力を活かして、サロンカフェ、チャリティバザールを担当する。
シンクタンクには、コーディネーターに富永国比古医師(公衆衛生学博士、サイコセラピスト)を委嘱している。

(2)資金管理
会計担当は、平栗恵美がPC管理(会計王)。状況に応じて会計事務所を使用する。
会計監査は理事会において行い、Web上に公開している。

8. 団体概要

沿革
2011年3月、震災の3日後に、キリスト教会の救援団体として、「緊急支援援助隊アガペーCGN」の福島県支部として活動を開始した。
2011年5月、宮城、岩手の状況と福島の放射能災害の違いを知り、ミネラルウォーターの配給を中心とした福島独自のNPOを設立した。支援の水、運営資金は、主に内外のキリスト教会から送られ、担当者はボランテアで奉仕し、リフト、トラック等の機材も無償で借り受けて運営された。
2011年12月26日、NPO法人となって独立。一年を過ぎてキリスト教会からの支援は終了したが、2012年からは各種助成金を受け、宗教性を持たないNPO法人としての経営に切り替えてきた。現在まで3000㌧、600万本/500ml・2016/5 大型トラック300台分)の配給をしてきた。
活動は、2011年からの「ひとりの子の命を守るために」、2014年からの、「もったいなからありがとうユニオン」「奪われた以上の夢を、失った以上の希望を」というキャッチコピーの如く、実際的に福島の子供達の命を守ることである。
2015年4月、860坪の敷地、400坪の建物を予約売買。
2016年6月、冷凍倉庫3坪建設。
2016年7月 募金者参加型寄付 FUKUSHIMAいのちの水基金セブンドナーオペレーション開始。
現在、あまりにも大きな困難であり、皆が立ちすくむような問題ではあるが、それはきっと、「福島の母性に信頼し支援すること」、で成し遂げられると信じている。

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